分かりやすい文を書くには、主語と述語を意識する

「より分かりやすい文章を書けるようになりたいな」と思い、文章術の本を読んでみたり、文法の勉強(中学レベルですけどね)をやり直したりしています。
今回は、文法で一番最初に学ぶ主語と述語についてです。

なお、この記事では、句点(。)で区切られた範囲を一つの文とします。

主語・述語とは、「文の骨格」である

基本的には、どんなに長い文も、「何が」(だれが)に当たる部分と、「何だ」「どうする」「どんなだ」という部分から成り立っています。

このうち、「何が」の部分は、その文の中心(主役)を表しており、その言葉を主語と言います。
そして、「何だ」「どうする」「どんなだ」の部分を表す言葉が述語です。

この主語と述語のセット、つまり「何が何だ」「何がどうした」「何がどんなだ」の部分は、文の一番重要な部分、つまり文の骨格と言うことができるでしょう。

例文

勇者は 足下を 調べた。

この例文の場合、主語は「勇者は」で、「調べた」が述語となります。つまり、骨格は「勇者は 調べた」です。
ちなみに、主語でも述語でもない言葉は、大体は修飾語です(この場合は「足下を」)。修飾語は、その下にくる言葉をより詳しく説明する役割を持ちます。

日本語の場合、述語は文の最後にくることがほとんどです。
主語は文の最初にくるのが一般的ですが、そうでない場合や、省略されてしまっている場合もよくあります。

主語と述語の関係に注意して、わかりやすい文を書く

以上のことを踏まえて、わかりやすい文を書くコツをいくつか挙げていきたいと思います。

主語と述語はなるべく近づける

一つの文が長い場合、主語と述語を離れた場所に配置すると、内容が頭に入りづらくなることがあります。

例文

勇者は、長い旅路の果てに、精霊の祠にいる老人から、パーミア遺跡の奥にある、『神々の宝物庫』を開け、破邪の剣を手に入れるために必要な光の鍵を手に入れた。

この例文の場合、主語は「勇者は」で、述語は「手に入れた」ですが、光の鍵がなぜ必要なのか、どうやって手に入れたのかなどの補足情報を修飾語として入れていくうちに、主語と述語が離れすぎてしまいました。

修正例

長い旅路の果てに、勇者は、精霊の祠にいる老人から、光の鍵を手に入れた。パーミア遺跡の奥にある『神々の宝物庫』を開け、破邪の剣を手に入れるために必要なものだ。

ここでは、文を二つに分け、光の鍵に関する情報を二つ目の文にまとめることで、主語と述語の距離を近づけてみました。修正前よりは、いくらか分かりやすくなったのではないでしょうか。

主語と述語のねじれを避ける

主語と述語の組み合わせ方が間違っていると、違和感のある文になったり、意味を取り違えられることがあります。
主語と述語の組み合わせがおかしくなっていることを、「主語と述語のねじれ」と言います。

例文

勇者の使命は、魔王を倒さなければならない

この例文の場合、述語は「倒さなければならない」ですが、主語が「(勇者の)使命は」になっています。
これでは、文の骨格が「使命は魔王を倒さなければならない」となり、おかしな文になってしまいます。

次のように、主語か述語を変えてねじれを直すと、正しい文になります。

修正例

勇者の使命は、魔王を倒すことだ
勇者は、魔王を倒さなければならない。

例文のように短い文では、文章のねじれが発生してもすぐに気づきますが、文が長く複雑になってくると、うっかり見落としてしまいがちなので、注意が必要です。

一つの文には骨格は一つか二つにする

まずは、以下の文を読んでみてください。

例文

勇者は、冒険者ギルドから、エパノール地方に水晶の塔が建っており、そこには女魔導士レイリアが住んでおり、近くに住む少女たちを誘拐し、邪神に生贄として捧げる儀式を行っているらしいという情報を得た。

何を言っているかはおおむね分かると思いますが、だらだらと長くて読みづらい文だなと思わなかったでしょうか。

長ったらしい文になる理由の一つに、「文中に骨格(主語と述語のセット)がたくさんある」というものがあります。
一つの文でいろいろな事を述べようとすると、そういう文になりやすいのです。
一つの文には骨格が一つまたは二つだけ存在するのがベストです。
(特に、一つの文に骨格が一つだけ入れることは「一文一義と呼ばれ、読みやすい文章を書くコツとしてよく紹介されます)

そこで、この文から骨格がいくつあるか探してみることにします。
まずは、文中から述語になりそうな部分、つまり「何だ」「どうする」「どんなだ」に当たる部分を抜き出します。

例文

勇者は、冒険者ギルドから、エパノール地方に水晶の塔が建っており、そこには女魔導士レイリアが住んでおり、近くに住む少女たちを誘拐し、邪神に生贄として捧げる儀式を行っているらしいという情報を得た

「建って」「住んで」「誘拐し」「行っている」「得た」の5つが見つかりました。

次に、これらを述語とし、対応する主語を探しながら文を作っていきます。

文の骨格

勇者は、(冒険者ギルドから情報を)得た
(エパノール地方に)水晶の塔が建っている(らしい)。
(水晶の塔には)女魔導士レイリアが住んでいる(らしい)。
女魔導士レイリアは、(近くに住む少女たちを)誘拐している(らしい)。
女魔導士レイリアは、(邪神に生贄として捧げる儀式を)行っている(らしい)。

というわけで、この文には骨格が5つあることがわかりました。

これを元に、一つの文に骨格が一つか二つになるように、文を作ります。

修正例2

勇者は、冒険者ギルドから情報を得た
それによると、エパノール地方に水晶の塔が建っており、そこには女魔導士レイリアが住んでいるそうだ。
彼女は、近くに住む少女たちを誘拐し、邪神に生贄として捧げる儀式を行っているらしい。

2つ目の文と3つ目の文、4つ目の文と5つ目の文は、それぞれ合体させて一つの文にしてみました。
骨格同士に深い関連性があったり、主語または述語が共通している場合は、骨格を二つにした方が、より分かりやすい文になります。

文を書くときも読むときも、主語と述語を意識しよう

文の骨格(主語と述語)がどこなのかを把握することは、その文の意味を正しく理解するということです。
それは、文を書くときだけでなく、読むときにも重要な事だと言えます。

文章を書く方は、自分の言いたいことを正しく表現するために。
そうでない方は、文章が言おうとしていることを正しく理解するために。
主語と述語に、気を配ってみてはいかがでしょうか。